不当な逮捕、拘禁、死刑

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不当な逮捕、拘禁、死刑 bookmark

死刑、臓器回収 bookmark

 アムネスティ・インターナショナルの調査によると、一年間の死刑判決/死刑執行数は、2004年は6000人以上/3000人以上、2005年は3900人以上/1770人以上、2006年は2790人以上/1010人以上となっている。年々処刑される人数は減っていると推測されるが、それでもなお死刑執行数世界一位の座を保っている。
 死刑に関しての全国統計が国家機密であることもあり、正確な数字を把握することは難しく、実際にはこの数字を大幅に上回っていると思われる。全国人民代表大会の地方代表の証言によると、年間1万人に上る処刑が行われているとのことである。
 被告の多くは公正な裁判を受けることができず、死刑を宣告されてから執行までの時間が短いため、上告の権利は無きに等しい。また、すぐに弁護士に面会できない、拷問による自白が証拠とされるなどの問題がある。通常の国であれば、疑わしきは罰せずという「推定無罪」が原則であるが、中国は疑わしいものは罰せられるという「推定有罪」になっている。死刑を適用できる犯罪は、1997年制定の現行刑法で68にも上り、薬物犯罪や暴力犯罪だけでなく、脱税や横領、汚職、売春斡旋など、ときには自転車泥棒という軽犯罪でも死刑になる。
 死刑執行は多くは銃殺であり、使われる銃弾の費用は死刑囚の家族が負担することになっている。近頃は、「全ての人間の尊厳に国が敬意を払っている」として、薬物注射による死刑執行が増えている。しかし中国は移植用臓器最大の供給国であり、処刑された囚人からの臓器の回収が、薬物注射による死刑によって、より効率的に行われるのではないかと懸念される。また省によっては移動処刑車が導入されており、移動しながらの薬物注射によって、死刑囚の遺体を新鮮なうちに病院に届けるために利用されている。銃殺刑の銃撃の部位は、本来は後頭部とされているが、臓器(内臓)が必要なときに後頭部を撃ち、角膜が必要なときは心臓部を撃つという報告もある。
 移植用臓器を死刑囚から回収していることについては、最近の例としては英国ガーディアン紙の報道で、中国のある化粧品会社が処刑された囚人の遺体から皮膚を採取してコラーゲンを抽出し、海外販売用の美用品の製造に利用しているというものがある。しかし、そもそも中国の移植用臓器の90%は、処刑された囚人からのものであるとの証言もある。移植には、本人や遺族の同意が必要であるとされてはいるものの、実際にはほとんどそのような手続きなし、あるいは意向を無視して臓器が取り出されていると言われている。死刑囚の死体は死刑執行後すぐに火葬されるため、遺族は臓器が摘出されたかどうかを確かめることができないようになっている。
 ナチスドイツでも、強制収容所で虐殺したユダヤ人の毛をつかってカーペットを作ったり、死体を焼却した灰を肥料として使うなどが行われたが、現代の中国はそれ以上に、効率的に人体を原料として利用し、収益を上げているのである。

労働改造所(ラオガイ) bookmark

 中国の廉価な輸出品の多くは、刑務所や強制労働収容所(労改:ラオガイと呼ばれる労働改造所)でつくられている。自身も19年間労働改造所に入れられたハリー・ウー(呉弘達)が設立した「労改基金会」によると、現在中国全土には1000を超える強制労働収容所と、4~600万人の囚人がいると推定されている。しかし労働改造所に関する数字は極秘とされ、更に収容施設が突然閉鎖されたり、移転されるため全容の解明は不可能である。
 収容者はほとんど無賃で収容所内の農場や工場、作業場で働かされ、日常的に受ける暴行や虐待、慢性的栄養不良、結核や肝炎の蔓延など、極めて劣悪な環境に置かれている。中国共産党の社会主義建設において、この大量の強制労働を効率的に利用した刑務所制度が果たした役割はかなり大きい。またこれほどまでに大規模、かつ多大な収益をあげるために刑務所制度を利用している国は、中国以外には存在しない。
 それぞれの刑務所や労働改造所は、生産品を輸出する際にまったく別の企業名を名乗るため、知らず知らずのうちに先進国の人々は中国の蛮行を支援しているのである。当然日本に向けた輸出品の中には、労働改造所でつくられたものが含まれている。
 また、きちんとした裁判を経ずに拘留できる、「労働教養」という保安処分があることも問題である。これは警察を主体とする判断によって、最高3~4年まで施設への収容が可能となっている。2003年のアムネスティのレポートによると、2001年初頭で約31万人が労働改造所に行政拘禁されており、「厳打」キャンペーンによってさらに増加していると見られる。

東トルキスタンで行われていること bookmark

 東トルキスタンでは、拷問や恣意的拘禁、不公正な政治裁判などの人権侵害が続いている。当局はテロとの戦いということを口実に、また「厳打」キャンペーンも利用して、抑圧をより強化させている。
 他の地域と比べても、「分離主義者」や「テロリスト」とされた政治犯が多数逮捕され、長期に渡る拘束や、処刑された人も多数いる。今でも「良心の囚人」を含む政治犯数千人が、不当に拘束されている。
 
 日本の大学院生であったウイグル人の良心の囚人、トフティ・トゥニヤスは、国内にいたときには、少数民族の歴史・文化などを調査研究し、民族政策策定のために諸提案を行なう職務にあった。1990年から3年間来日し、その間の研究成果として『ウイグル歴史文化研究』がまとめられている。1995年に再来日し、東京大学の博士課程でウイグル史の研究をしていた。研究のために1998年2月に一時帰国した最中に逮捕され、「分離主義扇動」と「国家機密不法入手」との罪名で11年の刑を言い渡され、現在も服役中である。しかし、彼の行った「国家機密不法入手」とは、自治区公文書館の歴史資料目録のコピーを取ったということで、この一事だけで判決書が出されている。
不当に拘禁されている留学生トフティ
 
 ラフト人権賞受賞、ノーベル平和賞候補となったウイグル人ラビヤ・カディールは、当局によって逮捕されるまでは中国国内有数の資産家であった。彼女はウイグル人女性の職業的自立を促すために会社を設立するなど、女性の権利を確立することに大いに貢献した。1999年8月に「国家機密漏洩」の罪状で8年の刑を受け拘禁されたが、国際的な注目が彼女に集まったこともあり、人権侵害を糾弾されることを恐れた中国共産党は、2005年3月に突如彼女を釈放した。その後アメリカに渡り、世界ウイグル会議の会長に就任するなど、民族運動の代表的な立場に立っている。中国は報復措置として、2006年に彼女の子供を逮捕し、懲役刑を課している。
 
 カナダ国籍をもつフセイン・ジェリルは、独立運動組織のメンバーであるとして収監されていたが、脱獄、亡命し、2005年にはカナダの市民権を取得した。 2006年3月に旅行中のウズベキスタンで拘禁され、6月に中国当局に引き渡され、現在はウルムチに収監されている。法廷でのカナダ外交官の傍聴や、カナダの彼の弁護士との面会も許可されておらず、カナダ人としての彼の権利が侵されている。
 
 「労改基金会」のレポートによると、東トルキスタンには確認されているものだけで刑務所が46、労働改造所は9箇所存在している。工業製品製造、採炭、農場耕作、紡績などが行われ、監獄や労働改造所と結びつかないような企業名(新疆第三機械工場、ウルムチ日用品加工所など)で、それらの製品が輸出されている。


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