東トルキスタンに自由と平和を


3.農耕と牧畜
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牧畜
 東トルキスタンでの牧畜業は、伝統的に遊牧によって営まれてきた。牧畜に従事しているのは主にカザフ、モンゴル、キルギス、タジク族である。東トルキスタンの北部一帯から天山山脈にかけてはカザフ、モンゴル族が、南西部の天山南麓からパミール高原にはキルギス、タジク族が居住している。彼らは歴史的にこれらの地域で活動していた遊牧民の子孫である。
 遊牧による牧畜は、草原の生産量が低い土地を大移動することによって、広い地域全体で家畜の採食量と植物の生産量のバランスをとるものであり、ユーラシア大陸北部の草原地帯(ステップ)で広範囲に渡って営まれてきたスタイルである。
 また遊牧はスキタイからはじまると言われ、4000年にもわたる歴史をもっている。そして、その生活様式がほとんど変化なく続いてきていることからも、ユーラシアの草原地帯の自然条件に最も適したものであるといえる。

 東トルキスタンの遊牧は、標高差による植生の違いを利用して、季節ごとに草原を移動するものである。季節ごとの移動の様式は地域によって異なり、四季それぞれに異なった草場、春・秋共通と夏と冬の3つの草場、温暖期と寒冷期の2つの草場、の3種類がある。それぞれの季節ごとの草場は植生が異なり、単なる地力を維持するという目的以外にも、家畜の季節の体調に応じた餌の供給という意味でも有用である。さらに、転場による遊牧民自身の快適な生活環境の選択という面もある。夏は標高の高い草原、冬は日当たりが良く風をよけることができる山かげや砂漠、などが居住地として選ばれてきた。
 飼育されている家畜は、羊、牛、山羊、馬、ラクダなどであり、羊の数が最も多い。

 遊牧生活は、学校に通うことが出来ないなど教育上の問題があったが、定住化を進める政策などによって解決されつつある。しかし、この牧畜民の定住化が強制的に行われたということは、砂漠化の大きな原因となっている。
 半乾燥性の草原であるステップは、降水量によって植物の生産量が大きく変わる。古来より、この変動の問題に対する緩衝作用となっていたのは、遊牧地の移動地域選択による調節と、家畜の飼育頭数の調節とであった。
 しかし定住化が促進され、牧地がほぼ固定されてしまったことにより、移動地域選択による調節という緩衝作用が働かなくなってしまった。もう一つの緩衝作用である家畜の飼育頭数の調節であるが、これも経済性ばかりが優先されるようになり機能しなくなってしまった。歴史的に見て部族社会であった遊牧民は、部族全体で頭数を調節していた。しかし牧畜業の人民公社化を経た後、改革解放によって各個人の責任制:責任請負制とされたために、飼育頭数の減少が収入減に直結するようになってしまった。これが過放牧につながり、地力を奪い、砂漠化に至る理由となったのである。
 また草原の開墾という問題もある。もともとステップ地帯は降水量が少なく農耕には適していない。それにも関わらず大量の漢族や新疆建設兵団などによって、広大な草原が農地として開発され、また無計画な灌漑による塩害と相まって、不毛の大地が大量に生み出されてしまったのである。

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