計画生育という名の産児制限

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計画生育という名の産児制限 bookmark



 日本では「一人っ子政策」として知られている人口抑制政策が、「計画生育」政策である。改革開放政策が始まった1979年から開始された。原則として、夫婦で子供一人だけ許可するというものだが、細かい規定が設けられている。これに違反した場合には罰則が科せられるが、実際にはその地域の担当者による強制中絶が頻繁に行われている。
 中国の制度上、国家が年間の出生数の計画を出すと、その数値目標がそれぞれの地区、郷・街道などで責任制となって負い被せられる。 違反者が出れば、その違反者だけでなくその地域の担当者までもが処罰の対象となる。そのため、出産適齢の夫婦には専任の担当者がつけられ、かなりの圧力がかけられている。結婚の条件にリングの装着義務があるという話も出ている。
 中国全土で、妊娠7ヶ月~9ヶ月での中絶が年間50万件にものぼると言われる。(日本では母体保護法で、妊娠22週までの人工中絶しか認められていない。)

 在外のウイグル団体や、人権団体によって、強制的な中絶措置で妊婦に多数の犠牲者が出ていると報告されている。
 医師が施す堕胎の手法は残酷であり、お腹の胎児に毒薬を注射して殺す、頭を鉗子で挟んで潰す、出産直後の赤ん坊でさえも、頭部にホルムアルデヒドを注射する、ポケットに常備している「首絞め用の留め具」を使って絞め殺すなど行われている。

 都市部の少数民族は2人まで、農村部であれば3人まで産んでも良いという優遇措置が施されている。しかし、一人目が3歳にならなければ2人目を作ってはいけない、女性側の戸籍所在地の政府から許可をもらってからでなければ出産できない、などの規定は適用される。
 また漢族であっても農村部であれば子供を2人まで持つことができ、条件を満たせば更に1人追加することができる。
 少数民族の優遇措置とは言ってもほとんどまやかしに近く、たとえば東トルキスタンに移住する漢族には、子供を更に1人追加して産んでも良いという特例措置があり、結局都市部の少数民族と同じ条件になっている。
 違反者に課せられる罰則は、平均収入の数倍の罰金などのように、かなりの経済的な負担がかかるものであり、貧しい人が多い少数民族にとってはかなり不利な条件になっている。
 例え優遇政策が施されたとしても、少数民族が人口抑制の対象となっているのであるから、内地からの大量の漢族の移住によって、いずれはその民族が消滅してしまうことを意味するであろう。

 また、計画生育には、たんなる人口の抑制という目的だけではなく、優生学的な面もある。
 1993年ワシントンポストは、甘粛省で26万人が、知的障害者として不妊手術を受けさせられたと報じた。また政府高官からも、度々優生学的な意図を含んだ発言がされている。
 「少数民族の人間は『知的に劣っていたり、体格が貧弱だったり、こびと、狂人』である場合が多い」というような、少数民族への人種的差別意識がよく現れている発言も漢族の行政当局者から出ている。ナチスのユダヤ人虐殺に用いられた優生思想と通じるものがある。

 また計画生育は宗教とも激しく対立する問題であり、ほとんどがイスラム教徒である東トルキスタンのテュルク系の少数民族にとっては到底受け入れがたいものになっている。1990年4月にアクト県バリン郷で起きた事件は、この計画生育が引き金になったといわれる。
 現在中国は、宗教が産児制限について口を挟むことを禁止している。しかし、そもそもこのような個人的な問題にまで制限を課している、中国共産党のほうが異常な存在であることは明瞭であろう。

 ちなみに中国と同様、人口大国であるインドでは、暴力的な手段によらずに、保健衛生環境と教育との向上から、出生率の減少を図っている。どちらも21世紀の大国候補といわれるが、この差は歴然としている。


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